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網膜剥離

眼球をカメラに例えますと、網膜とはフィルムに当たるものです(図1)。網膜は神経の膜であり、角膜や水晶体を通って入った光が網膜に当たると網膜はそれを電気信号に変えて、視神経を介して脳に刺激を伝える結果、ものが見える、ということになります。網膜剥離は網膜が何らかの原因により眼球壁側から外れてめくれる(剥離する)ことを指し、治療法、経過はその原因により異なります。網膜剥離には3種類あり、裂孔原性網膜剥離、牽引性網膜剥離、滲出性網膜剥離に分類されます。ただし、一般的によく耳にする網膜剥離とは、裂孔原性網膜剥離を指す場合が多いです。


図1

図2
 

網膜の構造

網膜は10層の組織から構成されていて、最も深い部分を網膜色素上皮と呼びます。網膜剥離とは、何らかの原因で網膜が網膜色素上皮から剥がれてしまった状態のことです。ものを見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び(図2)、ここは光に対して最も敏感な部分で、視力にとって一番大事な部分です。この黄斑が剥離してしまうと急激に視力が低下し、治療がうまくいっても元通りの視力に戻らない場合があります。

網膜剥離の分類

(1)裂孔原性網膜剥離

網膜剥離の中で最も多くみられるもので、網膜に孔(網膜裂孔・網膜円孔)が開いてしまい、目の中にある水(硝子体液)がその孔を通って網膜の下に入り込むことで発生します(図3)。剥離が進行すればすべての網膜が剥がれてしまい、最終的には失明に至ります。網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。剥がれた網膜には栄養が十分行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと徐々に網膜の働きが低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。近視、特に強度近視の人に多くみられ、20代と50代の人に多いといわれています。


図3


(2)非裂孔原性網膜剥離

網膜に孔のない網膜剥離で、牽引性網膜剥離と滲出性網膜剥離があります。 牽引性網膜剥離は眼内に形成された増殖膜あるいは硝子体などが網膜を牽引することにより網膜が剥離して起きます。重症の糖尿病網膜症などでみられます。

滲出性網膜剥離は、網膜内あるいは網膜色素上皮側から何らかの原因で滲出液が溢れてきたために網膜が剥離してしまった状態です。ぶどう膜炎などでみられます。

裂孔原性網膜剥離の症状

網膜剥離の前駆症状として飛蚊症(黒いゴミのようなものが見える症状)や光視症(視界の端に光のようなものが見える症状)を自覚することがあります。病状が進んでくると視野が狭くなったり視力低下が起きます。黄斑が剥離すると急激に見えなくなります。

裂孔原性網膜剥離の治療

図4

網膜裂孔・円孔だけが認められ、まだ網膜が剥離していなければ、レーザーによる網膜光凝固術で進行が抑えられることもあります。すでに網膜剥離が発生してしまった場合は手術が必要になります。網膜剥離は治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。

手術は大きく分けて2つの方法があります。

一つは網膜復位術といいます。目の外から網膜裂孔に相当する部分にスポンジのようなあて物をあてて、さらに孔の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って剥離した網膜を接着させ、必要があれば網膜の下に溜まった水を抜くというやり方です(図4)。

もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法です(図5)。この方法では、剥がれた網膜を押さえるために、目の中に空気や特殊なガスあるいはシリコーンオイルを入れます。手術後にうつぶせなどの体位制限を伴う安静が必要です(図6)。


図5

図6

裂孔原性網膜剥離の予後

手術療法によって多くの網膜剥離は復位させることができますが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、重症例は増殖性硝子体網膜症と呼ばれ、剥離した網膜上に増殖膜が形成された状態で治療が非常に難しくなります。 術後の視力に関しては、もともと黄斑が剥がれていない場合には手術前と同程度にまで回復する場合もありますが、黄斑が剥がれてしまっていた場合には、もとどおりの視力に戻ることは難しくなってしまいます。早期発見、早期治療が望ましいと言えます。

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